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「あれだね、君は見かけによらない――親思ひなんだね!」
「いや、どうも」
その塗りの色の落ちついた外まはりの築地塀、よく拭きこまれた廊下、塵一つ落ちていない部屋々々、渋い雅致のある床の置物だの掛軸、これらすべての上に現れているどこか神経質でさへあるよい趣味と堅固さ――さういふ外見にかかはらず、大石医院では年来をかしなごたごたが繰り返されていた。
「さうだね。まさか医者の家に古障子の玄関といふわけにもいくまいね」
房一が声をかけて回転椅子を押しやると、
「さうだ、鍵屋の法事へ行くんでね。さつきは、君にさう云ふのを忘れていたが――まあ、上りたまへ」
「はあ、どうも」
「本当も本当でないもありやしませんよ。財産譲渡無効、その返還を請求したのだよ」
「はあ!さう――ですね」
「それから、あれだが、今までよう訊かなんだが、――あれは、どうしたもんかの、大石さんの方は?」
「や、さうですか。僕も今そこから帰るところです」
印袢纏の背の高い男がその時、半シャツの男に向つて目くばせをした。